本日のブロガーは、ブログが原因で会社をクビになった有名ブロガーです。しかし彼女は単にこれによってブログをやめるどころか、ブログが原因で会社をやめなければならないことを人生のチャレンジと捉え、彼女は一層エネルギーをブログに注ぐことになります。
まもなく元祖ママブロガーとなった彼女は2009年には彼女はフォーブス誌の最も影響力があるメディアの女性の30名に選ばれ、数々のベストセラーを出版し、多大な影響力を維持しています。
彼女のブログのドメインの動詞型であるデュースト(Dooced)はウェブへの書き込みが原因で会社でトラブルとなる意味で使われる単語になりました。検索を「ググル」というようにです。
Dooce by ヘザー・アームストロング
ヘザーは今ではブランドであり、Dooceは彼女のブランドビジネスと言えるでしょう。ブログとして始まったDooceも現在は洗煉されたデザインのウェブサイトであり、ヘザーの文章には常に厭世観とインサイトが入り混じっています。優しい母親のような、自暴自棄のような、この繊細なバランスに成り立つ世界観のあるブログとなっています。
ブログを始めるまで
ヘザーはテネシーの田舎で育ちました。高校は首席で卒業する優秀な生徒ですが、地域では珍しいモルモン教徒であり、疎外感を感じて育ちました。
卒業するとロサンゼルスに引っ越して就職し、Webデザイナーとして働き始めます。渋滞が多く、また俳優もたくさんいるロサンゼルスライフを謳歌するようになりました。職場では優秀なウェブデザイナーとして活躍していました。
2001年になると、ヘザーは主にプライベートについて、独身女性としてロスでの生活を綴ったブログであるDooceを始めます。インスタントメッセージが流行していましたが、そこでDude(ちょっとあなた!)を急いでタイプして間違ってDooceと打ち込んでしまうことが語源です。
ブログはペンネームのDooceとして書いており、そこでは勤務先の名前は含まれていませんが、同僚についての文句なども匿名で書き込んでいました。最初は数十人が読むだけだと考えていたブログも徐々に読者が広がって行きます。
それから1年後、特に同僚の悪口を書いていることを理由として、ブログは匿名であったにも関わらず会社に見つかってしまいます。上司に問題であるとされ、ブログ解説からわずか1年でブログを理由に会社を解雇されてしまいます。
ヘザーはブログを理由に解雇を不当として会社と戦うこともなく、会社を辞めます。そしてプライバシーについて、解雇された後の生活についてブログに書くようなりました。この姿勢によって、ヘザーのブログの人気は一気に拡大していきます。またプライベードでも当時付き合っていたボーイフレンドと結婚し、また妊娠していることもわかりました。
クイーン・オブ・マミーブログ
2005年になるとヘザーのブログには相当の読者がいましたが、この頃にヘザーはブログに広告を掲載します。広告収入は一気に発生し、それだけで夫が仕事を辞めてブログを手伝えるほどの収入を稼げるようになりました。この時からヘザーはプロのブロガーになり、夫はヘザーのブログのアシスタントになりました。
ヘザーには子供も生まれ、フルタイムでブログを書きながら育児をします。忙しいことに変わりはありませんが、自宅で働くことができるため子供の成長を見守りつつ働くことができます。徐々にブロガーとしてはブログに育児についての喜びや苦労を書くことが増えました。
当時はまだブログは一般的ではなく、また育児についての記事も珍しい時代でした。おそらく世界的にも最初のママブログの一人であるヘザーは多くの読者を集めました。ママブログを求める読者はヘザーのサイトに殺到し、多くのファンを獲得していきます。
2011年にはニューヨークタイムズ紙はヘザーを「The Queen of Mommy Bloggers」と名付けました。ブログの読者数は1日10万人を上回り、広告収入は数千万円になっていました。この頃、ヘザーのブロガーとしてのキャリアは最高潮を迎えています。
しかし全てが順調というわけではありませんでした。家族とのプライベートをブログで共有しているヘザーですが、プライベートの本質的な情報は最小限にとどめていました。写真は載せますが、実際に何が起きているのかは読者にはわかりません。実際、夫とはいまく行っておらず、ブログの内容とは裏腹に、プライベートの実生活には葛藤を抱えていました。
2012年には夫と別れることをブログで公表し、シングルマザーとして二人の子供を育てつつフルタイムでブログを書く生活を始めます。ボーイフレンドと結婚して子供を育て、ブログを書いて生活するDooceの読者からは大きな反響がありました。離婚はメディアで広く取り上げられます。
スポンサーシップ
その後もDooceはママブログとして発展し、その後もクイーンオブ・マミー・ブログと知られ、大きな影響力を持つようになりました。徐々に人気ブロガーからインフルエンサーとしての称号が与えられるようになったのも、ヘザーが離婚したこの頃からでした。
インフルエンサーマーケティングが始まった時期でもあり、数々のファミリー向け製品を販売するスポンサー企業から、コラボレーションの仕事が舞い込みました。ヘザーは商品についてのスポンサーを支持する記事をアップし、子供と共に写真に映りました。ヘザーのツイッターによれば、これで何億円ものお金を稼いだそうです。
こうしてスポンサー広告でも大規模な成功を納めたヘザーでしたが、徐々に自分の声ではない記事を書くことにフラストレーションを覚えるようになりました。ブログの人気と共にスポンサーが増えましたが、企業の望むストーリーを書き、写真を掲載することを続けなければなりません。
ヘザーは軸足を自分のブランドへとシフトします。ベストセラーの本も出版し、2015年にヘザーはブログを主な仕事とすることを辞めました。今では講演、コンサルティングなどを通じて仕事をしています。
ヘザーのプライバーシーに関する考え方
ヘザーは家族のストーリーをマーケティングに使ったことを後悔していることをツイッターに書いていますが、実際のヘザーは家族を題材にしたブログに極めて慎重を取っており、よく考えた上で投稿しています。これは多くのブロガーにとっても参考になるアプローチでしょう。
ヘザーのあるインタビュー記事によれば、娘が11歳になっている今、娘が登場する全ての投稿は娘のチェックを経てから掲載することにしています。娘の友達も、その親も、先生もブログを読んでいることを知っているからです。近所の人々もブログの読者がいます。
今やセレブでもある彼女は、プライバシーとコンテンツについて慎重に配慮する必要があります。娘に投稿の下書きを見せてからという取り組みは、合意を得る目的だけでなく何をプライベートにするか、何を公開するかについて的確な判断を下すことに役立っているようです。
またヘザーは元祖ママブロガーであり、多くのプライベートを公開しているように見えます。しかし彼女に言わせれば、他人にとっては95%のプライベートを公開しているように見えても、ヘザーは実際には5%にも満たない情報をシェアしていると言います。リアルなコンテンツを出しつつ、プライベートは守る慎重な考え方が反映されています。
ブログの口調や服装は自虐的かつ歯に衣着せぬダイレクトな文章が多いのですが、実際にはよく考えられた繊細な思考が垣間みえます。ブログでは、なんでも思ったことを口にするリアルなコミュニケーションを図っていますが、読者とのつながりを考えた上での行動であり、むやみに非難したり、プライベートを露出しているのではないことがわかります。
家族ブログを書くにあたってのヘザーから学べること
ヘザーによれば、まだママブログがなかった頃の育児ブログはよりリアルで、綺麗ではなかったそうです。今では綺麗な洋服を来た赤ちゃんが、可愛く座っている写真がよく見られます。これからはまたリアルな育児ブログが求められるのではないかとコメントしています。
一方で、家族ブログはプライバシーとの兼ね合いも重要です。ヘザーが言うように親密感を感じられるほどの共有をしつつも、実は最小限に露出を抑えてプライバシーとも両立させることは可能かもしれません。
最近ではブログ以外のインスタグラムなどでも、プライバシーと引き換えにフォロワーを得ることが広く行われるようになっています。重要なのはリアルな自分を共有することで共感者を増やすためです。プライバシーを犠牲にしてページビューやフォロワーの数を集めることではありません。
ヘザーのように子供に投稿をまず見せるという方法は、自分の基準を確立するためにも良い方法かもしれません。
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